| | 私は普段、筆で文字を書くことがほとんどありません。そこで先日、お祝いの封筒に表書きするため、頑張って墨をすり、表書きを書き終えました。すると、これを見た祖父から、「お祝いなのに墨が薄い」と注意されました。知人からも、「慶事と弔事では墨を使い分けることがしきたりだ」と聞きました。本当でしょうか。 | | | のし袋の表書きは、冠婚葬祭(慶事、弔事)を問わず、毛筆が原則です。私たちは普段の筆記用具としてボールペンを使うことが多く、万年筆さえ使わなくなりました。まして、毛筆を使うことはありません。しかし、表書きにボールペンや万年筆を使うことは基本的にマナー違反です。筆ペンで結構ですから、毛筆で書くようにしましょう。その点では、あなたの姿勢は立派です。
ご質問のように、慶事は濃い墨、弔事は薄い墨で書く、というのも、実は儀式のしきたりの一つです。おめでたいことは慶びを表す意味でも濃い墨で書いて強調しますが、弔事の場合は、悲しみの涙で墨が滲む気持ちを表すために、薄い墨で書きます。また一説には、墨をする時間も惜しんで急いで駆け付けた、という意味もあるとされます。
現実問題として、普段から毛筆を使いなれた方ならともかく、墨をすることさえない現代人としては、濃い墨、薄い墨を使い分けることは難しいでしょう。それどころか、筆ペンで文字を書くことすらうまくできない、という方が多いのではないでしょうか。本来はマナー違反ですが、最低限のマナーとして、ボールペンや万年筆ではなく、黒のサインペンを使うよう指摘しているマナー書もあります。 | |
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